168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします(兵庫県) :2008/09/14(日) 00:39:33.07 ID:oV/UpyDW0
小学生のとき、足し算や引き算の計算、会話のテンポが少し遅い、T君という子がいた。
でも、幽霊と話すことができ、そのおかげか除霊が上手な子だった。
T君は、よく友達の幽霊を説得して追い払っていた。
幽霊と話せるT君の姿には、子供心に驚嘆した。
担任のN先生は算数の時間、解けないと分かっているのに答えをT君に聞く。
冷や汗をかきながら、指を使って「ええと、ええと、」と答えを出そうとする姿を、周りの子供は笑う。
N先生は、答えが出るまでしつこく何度も言わせた。
僕はN先生が大嫌いだった。
クラスもいつしか代わり、僕たちが小学6年生になる前、
N先生が違う学校へ転任することになったので、全校集会で先生のお別れ会をやることになった。
生徒代表でお別れの言葉を言う人が必要になった。
「先生に一番世話をやかせたのだから、T君が言え」と言い出したお馬鹿さんがいた。
お別れ会で一人立たされて、どもる姿を期待したのだ。
僕は、T君の言葉を忘れない。
「ぼくを、普通の子と一緒に勉強させてくれて、ありがとうございました」
T君の感謝の言葉は10分以上にも及ぶ。
大人は誰も信じてくれない除霊を信じてくれたこと。
放課後つきっきりで、そろばんを勉強させてくれたこと。
その間、おしゃべりをする子供はいませんでした。
N先生がぶるぶる震えながら、嗚咽をくいしばる声が、体育館に響きました。
と、その次の瞬間、
「お父さんに、『除霊師は、普通の人に正体を記憶に焼きつけてはいけない』。そう言われているんです。
…寂しいけど、除霊師の規則なんだ。
皆とはこれでお別れです」
泣きそうな声でそう言うと、T君は呪文の詠唱を始めました。
その長い詠唱が終わった後、T君はいつものように「破ァ!!」と叫ぶと、僕の目の前が真っ白になりました。
ようやく目が慣れて来た頃、そこにはT君の姿は無く、お別れ会は何事も無かったかのように進められていました。
僕は隣に座ってた子に、「T君どこに行ったの?」と尋ねると、
その子は「え?T君?誰のこと?」と、まるで最初からT君はいなかったかのように返されました。
僕は今でも、T君の姿が脳裏に焼き付いて離れません。
あれは夢でも妄想でも無かった。
確かにあの時、あの場所にT君は実在したんだ。
T君は今でもどこかできっと、苦しんでいる人の除霊に協力している。僕はそう思ってます。
寺生まれはスゴイ、僕が最初で最後にそう思った出来事でした。
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