255 :本当にあった怖い名無し:2007/02/07(水) 17:44:31 ID:xR2qNHYH0
10年ちかく前、休日に何かの用事でクルマを運転していた時。
直前を走っていた大型トラックの荷台から、でかいH鋼(っていうの?)の端材みたいな鉄材が、
スルっと、後続の自分めがけて滑り落ちてきた。
避けようと反射的にハンドル切ろうとした(たぶん、切ったと思う)のと同時に、
ああ、これは避けられんなと、妙に冷静に確信した。
一瞬で諦めたというか。
とにかく、死や痛みへの恐怖はなかったと思う。
スローモーションのように、H字の断面が目の前にナナメに迫るのを見ながら、
葬式はどうするんだ、パソにエロいデータが出しっ放しじゃなかったか、
なんてことまで考えてたかも。(いや、これはあとから考えたんだったかなw)
ところが、そのとき左耳に向かって真横から、
『おまえの弟が泣いて頼むので、今回は』という声。
同乗者なんていない。何もない空間から。
何をどうしたものかさっぱり分からんが、結果的には避けてた。
256 :255:2007/02/07(水) 17:46:04 ID:xR2qNHYH0
ルームミラー越しに、その鉄材が路上に横たわってるのを見た。
ホッとするというより、何で?って。
クルマにかすりさえしないって。
俺の後続には、距離を開けてライトバンがいて、そいつはトラックの伴走だったようだ。
落ちた鉄材の前で止まり、慌てて人が降りてきた。
その時点では、こっちはほとんど止まりそうなくらい減速していたが、
何だかよくわからないながら、何もなかったんだからからいいやと、
落ちた鉄材と、こっちを見ているライトバンのオッサンと、トラックをミラーでチラ見ながら、そのまま走行。
早くそこを離れたかったのだと思う。
ヤツらの胸ぐら掴んで怒鳴り付けることは、思いつきもしなかった。
ハンドル操作が間に合った気がしないないのだが、跨げる大きさじゃないし、頭上を飛び越えるわけないし。
俺のクルマがあの鉄材をどうやって避けたか、後続車にはどう見えたのか聞いてみてもよかったかと、
クルマを走らせながら、後でちょっと思った。
それにしても、あの声が何なのかが分からない。
『…今回は』って。
そのあとが『今回は救ってあげる』なのか、『今回は見逃してやる』なのか。
女の声ではなかったようだが、男の声だという確信もない。
だいたい、オトウトって誰よ。
俺に弟はいない。
親はすでに亡くしているので、今後生じる(w)予定もない。
義理のセンもなし。ヨメには、死産だったが妹がいたそうだけど。
257 :255:2007/02/07(水) 17:47:24 ID:xR2qNHYH0
泣いて頼んでくれたという弟じゃない誰かに、俺は感謝すべきなのかどうか。
確かに左から聞こえてはきたんだけど、
コンマ何秒だかマイクロ秒だかの間に、誰かが言葉を発して、空気を伝わって俺の鼓膜が震えて…
なんてちょっと考えられないから、物理的な音声ではなかったんだろう。たぶん。
どうやっても避けられないと見えた状況そのものも、
パニックで脳がとっちらかって認識しただけ、と思えば、まあ説明はつく。
ただ、『弟なんていない』と言葉にしたら、『それじゃ』と、あらためて頭上から鉄骨が落ちてくる…
なんてことが、万が一にでもあったらイヤだなと、今まで誰にも言ったり書いたりする気が起きなかった話。
長く乗ってたその時のクルマを今月手放したので、関係ないけど、なんとなく書きたくなった。
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