不可解な体験、謎な話 『古本屋』 - 洒落怖本舗

不可解な体験、謎な話 『古本屋』

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667 :本当にあった怖い名無し:2007/03/02(金) 04:05:27 ID:B27xsBTf0

俺は小学生の時(から高校までずっと)、遠くの私立の学校に電車で通ってたので、地元に友達って一人もいなかったのよ。

んで、両親は共働きだったんで、毎日親が帰ってくるまで俺は家で一人で遊んでたんだ。

つっても、一人で遊べるようなおもちゃなんてほとんど持ってなかったし、

何してたかっつうと、ずうっとマンガ読んでたのね。

うちの親はファミコン禁止にしてたくらいで、マンガもほとんど買ってはくれなかった。

だけど、月の小遣いに500円と、

あと小1の頃から片道1時間超かけて通学してたから、

途中でのど渇いたらジュース買っていいってことで、毎日100円もらってたのよ。

そのお金で、マンガを買いまくってたわけだ。

でも、それだと月3000円くらいじゃない。10冊も買えないんだよね。

もう、あっという間に読み終えちゃう。

だからいっつも、もっとマンガ買いたい、もっと読みたいって思ってた。

668 :668:2007/03/02(金) 04:07:01 ID:B27xsBTf0

で、小4くらいだったかな。

ある時、どうも世の中には古本屋というものがあって、そこではマンガが安く買えるということを知って。

しかもちょうどよく、駅から家までの途中に古本屋があったのよ。

初めてそこに恐る恐る入った時には驚いたね。

だって、色んなマンガが100円かそれ以下で売ってるんだよ。

もうそれ以来、毎日100円を握り締めてその店に通うようになったとも。

でもさ、所詮その店は町の古本屋さんなわけで、在庫なんかたかが知れてるさね。

もちろんたまに入荷はあるんだけど、毎日1冊買ってりゃそりゃあそのうち買うものもなくなるわ。

全然面白くなさそうなのでも、無理矢理買ったりして誤魔化してたんだけど、

(小学生で『実験人形ダミー・オスカー』とか買う俺も俺だが、売る店主も店主だ)

やっぱり、だんだん物足りなくなってっちゃったのよ。

そんなわけで、その店に飽き足らなくなった俺がどうしたかと言うと、新たな古本屋を探し始めたわけです。

当時住んでたとこは、まあ田舎ってわけでもなし、自転車で遠出すれば簡単に別の町に行けたからね。

669 :668:2007/03/02(金) 04:08:48 ID:B27xsBTf0

で結果的に、意外にけっこう近く、自転車で15分くらいのとこに別の古本屋を見つけたわけですよ。

それが家を出て左の道を進んでったところで、駅とは反対の方向だから、

子供の頃から全く行ったことがなかったとこにあったんだ。

なんか小さなショッピングモール?っていうの、

ひとつの建物の中に4~5軒、おもちゃ屋とか駄菓子屋とか肉屋とか入ってる建物があって、

道をはさんでその向かいに、って説明しても意味ないけどさ、

まあそれくらいはっきり、道順も風景も覚えてるってこと。

その店にはもう感動したよ。

今まで見たこともないような、でもものすごく面白そうなマンガがずらりと並んでてさ。

まあでも、やっぱり買えるのは1冊か2冊だから、一生懸命選んで選んで買って、

ほくほくしながら帰って読んだら、予想通り本当に面白いし。

ただ、その店にはそんなにしょっちゅうは行かなかったんだよね。せいぜい何度かってくらい。

っていうのも、その店は小さいんだけど品揃えがすごいから、いつ行っても、あれも欲しいこれも欲しいってなっちゃって、

結局買えないのが辛くてたまらないから、ってのもあった。

でも正直なところ、どうしてそんなに行かなかったのかは覚えてないんだよね。

今になってみると、行かなかったんじゃなくて、行けなかったのかもしれない、って思うんだけど。

670 :668:2007/03/02(金) 04:10:27 ID:B27xsBTf0

まあとにかくそんな風に、古本屋に通ってはマンガを買ってた小学生時代だったんだけど、

中学に入ってからは、部活が忙しくて帰りが遅くなったりとか色々な理由で、あんまり古本屋に行かなくなったんですよ。

駅からの途中にある最初の店は、それでもそれなりに寄ったりしてたんだけど、

二番目の店は、ちょっと出なきゃいけないってのも面倒だったし。

んで高校になって、今も住んでるところに引っ越したわけです。

不思議なのはここから。

高校になって受験勉強とかしてる時って、やっぱまあ色々辛いので、小学生時代を懐かしんだりするよね?

で、思い出されるのは、何故かいつも二番目の店だったわけだ。

しまいには夢にまで見るようになってさ。

それでとうとう、何年かぶりにあの店に行ってみよう、と思ったわけ。

駅から、ほんの数年前まで毎日通ってた道を、懐かしんだりしながら家まで歩いて、

そこからあの店まで、歩きだと30分くらいかな?

ここをこう行って、ここで曲がって、そうそうここの家がでかい犬を飼ってて――

で、はたと立ち止まってしまったのよ。

671 :668:2007/03/02(金) 04:11:20 ID:B27xsBTf0

(なんかもう想像ついてるだろうけど)

あの店が、というより、あの店まで行く道がない。

あとひとつ角を曲がれば、あのモール?の建物と向かいの古本屋があるはずなのに。

もう何度も確かめたよ。少し先まで行って曲がってみたり、いったん戻って行き直してみたり。

それでも、そこで曲がるはずの角がどうしても見つからない。

というか、T字路だったはずなのに、右の棒の部分の道がなくて逆L字になってるんだよね。

その日は夕方だったから間違えたのかも、と思って、次の日曜に行ってみたりしたけど、

やっぱりどうしても曲がり角は見つからなかった。

そんで、ふと気づいたんですよ。

俺は前述の通り、マンガに対する執着がものすごく強かったから、

引越しの時もマンガは1冊も売ったり捨てたりしてないのね。

しかも、そのどれも何度も何度も読んでるから、全部完璧に覚えてるのよ。

なのに、あの店で買ったマンガがどれだったか、全く思い出せない。

あんなに面白い面白いって読んだはずなのに、どんなマンガだったのかさっぱり覚えてないんだ。

なんかそれに気づいてからは、無理に探したりしない方がいいのかも、とか思うようになった。

よくわからないけど、そっとしといた方がいいものなのかなって。

672 :668:2007/03/02(金) 04:12:22 ID:B27xsBTf0

ちなみに、社会人になった今でも、辛いことがあるとあの古本屋の夢を見るんだよね。

高校の時からずっと同じ内容なんだけど、家の前から左の方に記憶どおりに進んでいくと、簡単にあの店まで行けるのよ。

変わらず小さいけど、良い品揃えで、面白そうなマンガばっかりで。

で、小学生の時よりはるかに金持ってるから、大人買いしようとするんだけど、何故かいつもどうしても買えないんだよね。

急に人がいっぱい店に入ってきて押し出されちゃったり、逆にレジにも誰もいなくて何度呼んでも出てきてくれなかったり。

そのうちに、あ~あ、そろそろ帰らなくちゃな、って気がして、目が覚めるんだ。

いつになったら買えるのか、自分でも楽しみにしてるんだけどね。

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