後味の悪い話 『ゴマちゃん』 - 洒落怖本舗

後味の悪い話 『ゴマちゃん』

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661 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/26 22:38

北海道の流氷の間に挟まれて動けなくなった、ゴマフアザラシの赤ちゃんがいた。

その親アザラシは、赤ちゃんを目の前に何もすることができない。さびしい声で泣くだけ。

地元の漁師の間で「可愛そうだ、助けてやるか。でも危険だから近づけない」という話をしていたら、

いつのまにか親アザラシはいなくなった。

「それなら赤ちゃんの方も死んだんだろう・・・」と噂をしていたら、その話が某国際的な動物愛護団体に伝わる。

その動物愛護団体は、危険をかえりみず氷河の中へ入って行き、親アザラシと赤ちゃんアザラシを発見する。そして救助。

しかし、親アザラシは衰弱が激しく、涙を流しながら赤ちゃんを見ながら息を引き取る。

赤ちゃんアザラシの方は衰弱が激しかったものの、点滴や投薬、ありとあらゆる手を施され、なんとか一命を取り留める。

662 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/26 22:38

赤ちゃんアザラシは元気になったが、急に自然に帰す事はできない。

自ら餌を取るように訓練し、体力をつけて自然に帰してあげなければと、

動物愛護団体は1年の歳月をかけ、赤ちゃんアザラシを育てる。

この時点で、赤ちゃんアザラシは『ゴマちゃん』と呼ばれ、お母さん代わりのスタッフ、幸恵さんに大切に育てられる。

幸恵さんはカナーリ美しい方で、ゴマちゃんの育児日記などを執筆していた。

自然がどれだけ素晴らしく大切か。切々とした思いが日記に書かれていた。

ゴマちゃんも健康になり、別れはつらいが幸恵さんと別れる日がやってきた。

地元の第一発見者の漁師、又その仲間、役場の人々、そしてその人達の家族たち、

近所の幼稚園児、隣接する自治体の小学生、中学生達がゴマちゃんの旅立ちを見守る事になった。

新聞社やテレビ局も取材にやってきた。

とにかくすごい人出で、幸恵さんもうれしいやら悲しいやら、涙ぐみながらゴマちゃんを撫でる。

663 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/03/26 22:40

ゴマちゃんと幸恵さん、そして大勢のスタッフや見物人を乗せ、出航するフェリー。

沖合いにある氷河に近づく。ゴマちゃんと幸恵さんとスタッフは氷河に乗り移る。

ゴマちゃんを足元において、いとおしく撫でる幸恵さん。

別れを惜しむように幸恵さんがゴマちゃんを見つめていると、沖合いで魚が跳ねた。

その音に反応したのか、ゴマちゃんは海に向かって腹ばいで歩き出す。そして海へ。

ああ・・・帰って行くんだねと見つめていると、

ゴマちゃんが名残惜しそうに振り返ったような気がした瞬間、

ゴマちゃんは海中から現れたシャチに一口で食べられてしまった。

いついつに自然に帰されるという予定の報道があったきり、二度とゴマちゃんについて報道される事は無かった。

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