百物語 『取り壊す前のアパート』 - 洒落怖本舗

百物語 『取り壊す前のアパート』

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209 :んで:2000/08/21(月) 03:15

>>86で出てきたM(ドライバー)と、そいつの友人とで飲んでいた時の事。

ふと話題が幽霊系になって、あれこれ話していた時に、

その友人が「そういえばHの家、建て替え終わったよ。でもアソコは空き地だって」と話している。

Hとは面識程度の仲だったので、何だろうと思い聞いてみると...

Hの家は母屋とアパートがあるが、崩れ掛けて来たので建直してマンションにする事になった。

すべての賃貸人との契約が切れるまでには暫く時間が掛かりそうなので、

最初に空き部屋になった所にHが母屋から引っ越したという。

親と離れて住めば悪い奴が寄って来るのは当然で、先の2人が毎晩のように遊びに行っていた。

Mは何となくイヤな感じがあったが、口に出す事はしていなかった。

でも、Hが移り住んで1週間ほどしての深夜、もう1人加えて麻雀をしていた時にMは見てしまった。

古い作りの部屋だから、居間の隣はすぐ便所。

その便所の扉の中央がグニャと歪んだと思ったら、スーっと無表情の男がこちら向きに胸まで出て来てた。

便所のドアから斜めに生えている感じだった。

出て来た位置がMの正面だったのでジッと見ていたら目が合って、その男は「ニッ」と薄ら笑いを浮かべて消えていった。

そして、MはHに「ココいるぞ...」と言った。

皆、Mの事は良く知っているので、一瞬で理解したと言います。

Hは翌日には母屋に引越し。

直ぐに親にこの事を話したら、

「お前が生まれる前に、あの部屋の便所で首を吊った男がいたんだ。

 でも、出たとかと言う話は無かったんで、成仏しているのかと思っていた。

 あの部屋に入る人が早く出て行ってしまうのは、そのせいかも知れないな」

と、話してくれたそうです。

210 :んで:2000/08/21(月) 03:15

建直し後も賃貸部屋となるので、変な噂になってしまうのも良くないと、

取り壊す前に、とりあえず坊さんに御祓いをお願いする事になったらしい。

Hが「坊さんに祓ってもらう」と言ったら、

Mは「あれは...坊さんじゃ祓えないと思うよ、笑ってたし...」と余計な事を言ってしまった。

Hから「じゃ、お前も立ち会え!」と強引に迫られ、渋々立ち会うことになった。

坊さんがトイレのドアに向かって、お経じゃない何か唱えている...

立ち会っている人たちは手に護符みたいな物を握らされていた。

何かを唱えながら坊さんが便所のドアを開ける。懐から何かを出して撒いている。

坊さんが便所のドアを閉め元の位置に戻り、さらに強く何かを唱え出した時に、

Mの目に例の晩の再現が見え始めたと言います。

ドアの中央がグニャと歪んでスーと男が出てくる。今度は最初から薄ら笑いを浮かべて。

そして、前回とは違い全身が出てきて、坊さんの1Mほど前に前屈みになって直立し、薄ら笑いを浮かべている。

Mはチラッと周りを見て、今度は見えているのは自分だけじゃ無いのを知る。

H、Hのご両親、そして坊さん。全員の視線がその薄ら笑いの男に向いていた。

さらに激しくなる坊さんの何かの唱え。

とその時、薄ら笑い浮かべている男がツ、ツーと動いて、

「効かねぇよ」と呟いて坊さんを通り抜けた。

そのとたん坊さんはひっくり返り、全員無言。

薄ら笑いの男は消えた。

坊さんはお布施も取らず帰って行きました。

件の部屋も取り壊されるまでは誰も寄り付こうとはしなったそうです。

ココまで聞いた時にはすっかり酔いが覚めていました。

んで、疑問。

「今まで出てこなかったのに、なんで出てきたんだ?」

M「俺が見えてしまったからかなぁ...」

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