28 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/02/01 21:57
ある夜、ふと気配を感じ目が覚めた。
天井近くに白くぼんやり光ものが浮かんでいた。
目を凝らして見てみると、白い顔をした女の頭だけがぷかぷか浮いていた。
ぎょっとして、体を起こそうとするが動かない。
目を閉じたくても何故だか閉じることができない。
冬だというのに脂汗が滲んできた。
その女は無表情のまま目だけを動かして、部屋をきょろきょろ眺めていた。
こっちを見てないのが救いだった。
固まったままどうすることもできず女を見つめていると、急にこっちを見てつぶやいた。
「どこ?」
何が何だかわからない。
何を探しているんだ。
俺の部屋に何かあるのか?
さっぱり見当もつかない。
震えていると、浮かんだ顔がずいっとこっちへ近づいた。
すぐ目の前、息がかかるほどの距離で、
「ねぇ、どこ?」
目を見開き、口をかっと開けたその表情に恐怖が増し、
とっさに「今はない!」と答えた途端、意識を失ったのか気がつけば朝だった。
29 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/02/01 21:59
夢とは思えない感触に震えは止まらず、すぐに家を出て友達のAの家に行った。
そのままAの家に泊めてもらおうかと思ったが、
その日は良くても、次の日家に帰って出たらどうしようと不安になり、
結局、Aにうちに泊まってもらうようにした。
夜更けまで話をして気をまぎらわしていたが、睡魔には勝てず、いつしか眠ってしまっていた。
再びあの気配がして目を覚ました。
いた。
俺の上ではなくAの上に。
Aの顔を覗き込み、じっとしている。
Aは気付かず眠っているようだった。
がたがた震えながら、目を逸らすこともできず凝視していると、
ふーっとこっちへ寄って来て、目の前で、
「違う。ねぇ、どこ?」
息がかかるのがわかる。
「今はない!」
また気を失ったようで、Aに起こされて目が覚めた。
夕べの話をしても、Aは何も感じなかった、夢だろうと笑った。
俺にはそう思えなかった。
心当たりは何もない。
部屋にはたいした荷物もないし、何を探しているのかさっぱりわからない。
30 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/02/01 22:00
今日も泊まっていってくれとAに懇願したが、用事があると断られた。
仕方がないので別の友人Bに、泊まりに来ないかと電話をかけた。
結果は同じだった。
Bの顔を覗き込み、
「違う。ねぇ、どこ?」
「今はない」
俺は意識を失う。
恐くなった俺は、友人Cのところへ泊まりに行った。
部屋を替えれば何ごとも起こらないだろう。
友人Cは快く泊めてくれた。
しかし、Cの部屋にもあいつはやってきた。
眠ったCの顔を覗き込み、
「違う。ねぇ、どこ?」
少し慣れたのか、思わず「知らねーよ!」と答えた途端、顔がぶわっと視界一面に広がり、弾けたように消えた。
良かった。いなくなった…
そう安堵して、自分の部屋へ帰った。
31 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/02/01 22:12
甘かった。
その夜また、
「ねぇ。どこ?」
今までと違ったのは、顔に怒りの表情が見えることだ。
俺を責めるように問い掛ける。
「ねぇ、どこ?」
「ねぇ、知ってるんでしょ?どこにいるの?」
神経がおかしくなりそうだった。
あいつは誰かを探しているんだ。
俺に関係するのか?
何もわからない。
それから俺は、友人を片っ端からうちの部屋に泊めた。
誰も何も見ない。何も感じない。
しかし、あの女は毎晩俺に尋ねてきた。
「ねえ。どこ?」
そんな毎日が続いた。
気が狂いそうだった。
32 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/02/01 22:17
しばらくして、友人のHが泊まった時のこと。
目が覚めるといつもの女。
もうだいぶ慣れてしまった俺は、女を見つめていた。
Hの顔を覗き込みじっとしていたが、俺の方に顔を向け、ぐぐっと寄って来た。
しばらく俺の顔を見つめ、
「み~つけた」と、にたりと笑った。
歪んだ笑みは何とも言いがたい不気味さだった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
叫ぶと体が動き、思わず外へ飛び出した。
近くの友人のとこへ飛び込み、がたがた震えて今までの話をした。
一旦家に行こうと言われ、一緒に部屋へ帰ってみると、寝ているはずのHの姿はなかった。
それ以来、Hの行方は知れない。
Hの家族にいろいろ聞かれたりもしたが、正直に話をしても、頭のおかしな奴だと思われたようだ。
俺が殺して埋めたんじゃないか、という噂もあった。
当時の友人も離れて行ってしまった。
俺のせいなのか。
こんなことになるとは思っていなかったんだ。
Hとその女の関係はわからないまま。
Hはどこへ行ってしまったのだろう…
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