百物語 『桜公園のトイレ』 - 洒落怖本舗

百物語 『桜公園のトイレ』

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293 :代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8 :2012/08/19(日) 05:31:23.27 ID:jvZ3IDbu0

雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 様 『桜公園のトイレ』

組合仲間の話。

とある山中の町へ仕事で出かけた、その帰り道。

道中に桜で有名な寺社公園があった。

すっかり暗くなっていたが、夜桜を楽しもうと思いつき、そのまま車で乗り入れた。

山裾を少し分け入ったその公園には、時間が遅いせいもあってか誰もおらず、一人ベンチに腰掛けて桜を眺めていた。

何も思案すること無くしばらく呆っとしていると、突然身体を激しく揺さぶられた。

驚いて我に返ると、壮年の男性が怖い顔で彼の肩をつかんで揺すっていた。

「あんた、こんな所で一体何しているんだ!?」

そう問われて「え、いや、ただベンチで夜桜を楽しもうと・・・」など答えた時、

自分が見覚えのない空間に座っていることに気がつく。

四方が白い壁に囲まれた狭い場所。微かに悪臭がする。

彼はいつの間にか、薄汚れた洋式便器に腰掛けていたのだ。

慌てて男性と一緒に外へ出た。

あの公園の、隅にある小さなトイレ。

その大用の一つに、彼はいつの間にか、自分でも知らぬ間に籠もっていたらしい。

「驚いたよ、側を通りがかると、トイレの中から唸り声が聞こえてくるんだから。

 てっきり怪我でもしているのかと。具合でも悪いのかい?」

そう言った男性の足下で、犬が尻尾を振っている。

どうやら夜の散歩の途中だったようだ。

294 :代理投稿 ◆nqnJikEPbM.8 :2012/08/19(日) 05:34:14.08 ID:jvZ3IDbu0

「いや私、あそこのベンチに腰掛けていた筈なんですが、気がついたらあなたに声をかけられていた状態で・・・」

そう説明しながら、自分でも訳のわからない説明だなぁと感じていた。

「それなら構わないけど・・・ここのトイレ、過去に二人ほど自殺してるからなぁ。

 お節介だとは思ったけど、ちょっと不安になって声を掛けたんだ」

“自殺”という言葉に思わずドキッとする。

身体を調べてみたが、幸い、特に体調の悪いところも見当たらない。

男性に礼を述べてから、すぐに公園を出たのだという。

彼はその後、その公園には一人で訪れないようにしているそうだ。

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