750 :1/5:2006/10/11(水) 18:00:00 ID:sqRfS1Fk0
幼稚園の頃、祖父母の住む田舎に行った時に、不思議な生物に会いました。
のんびりとした田舎町で、周りに住んでいる人全員が、家族のように仲がよい場所なので、
両親も心配せずに、私を一人で遊びに行かせていました。
ザリガニしか釣れないくらいの浅い川辺に、白詰草が咲いていたので、
私は一人で、母に教えてもらったばかりの花輪をつくっていました。
子供だったので、周囲も見ずに夢中で手元の花輪に集中していました。
すると突然、横から半透明の腕が伸びて、私の作っていた花輪をむしり取りました。
その人間(?)は薄い緑色の身体で透けていて、身体の向こう側の景色がぼやけて見えていました。
背丈は当時の私よりも少し大きいくらいだったので、幼稚園の年長か、小学1年生ほどの体格だったと思います。
目も鼻も口も無くて、ただ、ゆらゆらと揺れる輪郭だけが人間の形をしていました。
751 :2/5:2006/10/11(水) 18:00:53 ID:sqRfS1Fk0
今から考えると、どう見ても人間ではなく、子供の無知の恐ろしさを痛感しますが、
当時の私は恐がりもせずに、その緑色の人間に話しかけました。
何を言っても返事はないけれど、私は気にせずに一方的に話しかけ、
たくさん花輪を作っては、その人に渡していきました。
花輪作りに飽きた私が、川に手を浸したり、川底にある綺麗な石を探したりして遊び始めると、
その人は川の中に足を入れて、両足をバタバタと動かして水しぶきを作りました。
半透明の足の動きと水しぶきがとても綺麗で、私は何度もねだり、その行為を繰り返してもらいました。
その人間に触れた感触は、水風船を触る感触に似ていると思います。
ブニブニと柔らかくて、触れた手は水を触っているようなのに、濡れない感覚です。
その後お腹が空いたので、私は祖父母の家に帰り、友達ができたことを伝えましたが、
両親も兄も信じてはくれませんでした。
「子供の空想話」
「この辺りには子供はいない、ましてや緑色の人間なんて」
と笑われ、信じてもらえないことにショックを受けたのを覚えています。
752 :3/5:2006/10/11(水) 18:01:46 ID:sqRfS1Fk0
それから5日間くらい祖父母の家に滞在しましたが、その間は毎日、その緑色の人間と遊んでいました。
次の日に帰る、ということを緑色の人間に伝えた時、私は寂しくて大泣きしました。
「帰りたくない」と何度も私が言うと、その人は私の腕を掴み、川の向こう側にある林に引っ張っていきました。
父と虫取りに来たことがある林で、それほど大きな面積ではなかったはずなのに、
その時は歩いても歩いても、林を抜ける気配はありませんでした。
疲れてしまったし、段々と引っ張る腕が恐くなってきて私が泣くと、その人は手を離してくれました。
声を聞いた覚えは無いのですが、当時はその人が「ごめんね」と謝ったような気がしました。
一番不思議なのは、
その時に彼(なんとなく男の人だと思っていました)と一緒に遠くへ行こうかな、と自分が思ったことです。
もう二度と父や母や兄に会えなくなるけど、いいや、と一瞬思いました。
なぜ遠くに行くのだとわかったのか、もう二度と家族に会えなくなるということがわかったのか、
不思議ですが、確かにその時私はそう思いました。
753 :4/5:2006/10/11(水) 18:02:37 ID:sqRfS1Fk0
その場所で座って少し休憩した後、今度は手を繋いで林を歩き始めました。
てっきり彼の住む「遠く」へ行くのだと思っていたのですが、林を抜けたらすぐ目の前に祖父母の家がありました。
家は林や川に近い場所にあるわけではなく、林を抜けてすぐに家があるなんてことはありえませんでした。
庭で祖母と母が洗濯物を干していて、すぐに私に気がつき、近寄ってきました。
手を繋いでいたのに、いつのまにか彼はいなくなっていました。
次の日に家族で車に乗り、家へ帰る途中に少し遠回りをしてもらって、川辺の傍を走ってもらいました。
しかし、彼はいませんでした。
後から聞くと、私は一人で川辺で遊んでいて、
近所の畑にいる農家の人が川辺を通る度に見ていたので、両親は心配していなかったそうです。
家に帰ってすぐに、お絵かき帳にその時の絵を描き、両親も覚えているので夢ではなかったと思います。
754 :5/5:2006/10/11(水) 18:03:09 ID:sqRfS1Fk0
祖父は数年前に亡くなり、祖母も先日他界しました。
家は売ってしまうそうです。
祖父母の荷物の整理のために、その家にしばらく泊まり、何度も川辺に行きましたが、もう彼には会えませんでした。
幼稚園の時以来、何度も何度も祖父母の家に帰省する度に川辺に行くのですが、彼はいませんでした。
ただ、荷物を整理している時に父が教えてくれたのですが、祖父母は私の話を信じていてくれたそうです。
「●ちゃんは河童に会ったんだよ」と言っていたそうです。
良く絵で見る、頭にお皿を乗せた河童ではなかったし、水かきも甲羅もなかったけれど、
なんとなく今は、「ああ、私河童に会ったのかなぁ」と思っています。
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