死ぬ程洒落にならない怖い話 『姪と人形』2/4 - 洒落怖本舗

死ぬ程洒落にならない怖い話 『姪と人形』2/4

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207 :本当にあった怖い名無し:2007/08/15(水) 20:41:30 ID:5YLV1F5lO

(れ)

その日オレと姉は昼飯も食っていなかったが、もう陽は傾いていた

姉はダルそうであったが、強いて子供達のために夕食を作った、この余計者の為にも

肩身の狭い思いがしたが、今はこの親子の側にいた方がいい気もする

そして検査の結果次第では義兄にも話しを通した方がいいかもしれない

そこまで考えてオレはハタと気が付いた

母屋はどうした、まず姉の義父母、義兄達に相談すればいいではないか

その晩、何故か甥が一人で寝るのを非常に嫌がって、結局オレの部屋で一緒に寝ることになった。

オレにあてがわれた部屋は二階の真ん中の部屋

二階にはこの部屋の両脇に、一つは半ば納戸代わりに使われている四畳半くらいの部屋が一番奥に

もう一つは義兄が書斎として使っている部屋が階段寄りにある。

甥と姪の部屋、それから姉夫婦と姪の寝室は一階にある。

建て売りではない、設計士が義兄と相談しながら図面を引き

地元の大工が建てた割合としっかりした造りの家だ。

建ててまだ10年建っていない。

その家が微かにだが揺れだした

地震、小さいが確かに揺れている

まだ起きていた甥が布団から飛び出して、しがみついてきた。

208 :本当にあった怖い名無し:2007/08/15(水) 21:59:44 ID:5YLV1F5lO

(そ)

けっこう長く揺れが続いたような気がしたが、実際には10秒位ではなかったろうか、

オレもあの地の底の唸りのような地震というものは嫌いだ

揺れが完全に収まると、オレはまた一昨日の夜と同じ様に、

甥を腰にまとわりつかせて階下に姉たちの様子を見に行った

部屋の前に立ち襖を軽く叩いた、応答はない

そっと開けてみると、姉も姪も寝ていた

小さくはあったが、かなり小刻みに揺れていたはずだ

二人とも余程疲れているのか、眠りが深いのか

襖を閉めて、茶の間に入るとカーテンを開けて母屋の様子を伺った

この家と母屋の位置関係は互いの家が見えにくかったが電灯は点いていないようだ

念のため窓を開け庭に降りてみた

やはり誰も起き出してきてはいないようだ

もっとも震度2程度なら気が付かなくても無理ないか

でも毎年この時期になると毎年、東海沖地震が囁かれる中、

静岡に住んでるならもう少しデリケートであって欲しいとも思う。

振り返って家の方を見る

甥が窓際でこちらを見てる、逆光で表情は見えない

茶の間に戻り甥を二階に促す、瞬きが妙に少ない

まだ怯えていた、甥もオレも。

とたん東京に帰りたくなった、娘と、二人の息子に会いたくなった。

209 :本当にあった怖い名無し:2007/08/15(水) 23:39:55 ID:5YLV1F5lO

(つ)

甥と二人、再び布団の上に横になった

昼間の事がまだ頭の中に残っていて、念の為、甥に聞いてみた

あの人形の事、何か知らないか

あるいは、あの人形、どこかに移動しなかったか

甥を疑っているわけではなかった、ただ念の為

昼間、頬にあの髪の毛が張り付いていたのが気になっていたから

あるいは人形の件は甥の質の悪い悪戯か

みんなが、いやこの時点ではオレと甥だけだったか、疑心暗鬼になっていた気がした

甥は、知らないと言った、あの人形には触りたくないとも。

オレも同感だよ。

翌日、オレは神社に行った。

かなり探したが、やはり人形は無かった

あるいは猫がくわえて、縁の下にでも持ち込んだか

そこまで探した

シンの三柱(スマン漢字が出てこない)、この下にもあったのかどうか、そこまで確かめる余裕はなかった

ただ帰り際に古びだ板に書かれた、この神社の祭神を読んだ

素戔嗚尊、櫛稲田姫尊、それともう一つ、読みがまったくワカラン、毒蛇気神尊

ドクジャキシンノミコト!?

この読みが分からない為、オレ達は結局苦労した

239 :本当にあった怖い名無し:2007/08/17(金) 00:21:48 ID:vM+LwB6eO

(ね)

肝心の人形が見つからずオレは途方にくれた

しかし、何もあの人形でなくても、同じ場所にあった物なら同じ物が付着しているかもしれない

姪がどの辺りから、あの人形を引っ張り出したのかはしらないが、とりあえずオレは、箱の中に積まれている物から

上層部から一点

中頃から一点

それと下の方に格子からはみ出てる破魔矢の羽根に黒いシミがあったものだから、ついでにそれも

計三点それぞれの一部を切り取ってケースの中に収めた

その日、神社から帰った後、オレは母家に行った

姉の様子を少し伝えておいた方がいいと思ったからだ

ついでに、あの神社の管理者、あるいは神主の住所も尋ねてみようと思ったが説明するのが難しい

結局その日は聞かずにおいた

この家でスイカを馳走になった、身の黄色い小玉西瓜だった、種が少なく、よく冷えていて非常に美味だった

姉にとっては義姉にあたる、小柄だが気さくな奥さんが、ウチではまだ西瓜を井戸で冷やしてる、と半ば自嘲気味に

半ばは自慢げに言っていた

240 :本当にあった怖い名無し:2007/08/17(金) 00:24:52 ID:vM+LwB6eO

(な)

そう、この敷地には井戸があった

この地方は海が近いが、ワサビの名産地でも知られる水の綺麗な所でもある

そして水を大切にする所だ

その井戸の傍らに木でできた小さな祠、稲荷のようなものがある

毎朝その前には白米、菓子などを供えるのがこの家の決まり事だ

何を祭っているのか、まだはっきりとは聞いたことはない

が、水を鎮る神様だと言う

昔、この地方を悪い疫病が襲い多数の死者が出たらしい

手を尽くしたあげく、原因は水から、となったらしい

それからだそうだ、どの家でも井戸の傍らに祠を置くようになったのは

母家を辞して姉の家に戻った頃は、もう昼時になっていた

ただそれがどれくらいの昔なのかはわからない

素麺のツユを垂らすなと、姉が姪を叱っている

姉の顔に、以前にはない険があるようだ、母家の奥さんの朗らかな顔を思い出しながらそう思った

午後は本屋に行くつもりだった

この時点でオレは神秘主義に陥っているつもりはなかった、ただ何となくあの神社の祭神に興味を惹かれたからだ

241 :本当にあった怖い名無し:2007/08/17(金) 00:28:36 ID:vM+LwB6eO

(ら)

日本の神々、似たような本は何冊かあった

どれも素戔嗚尊、櫛稲田姫尊の名はあるのだが、毒蛇気神尊の名はどの本にも見当たらなかった

姉の家にはパソコンがない

仕方なく予め状況を掻い摘んで報せておいた、先の友人にネットで検索してもらう事にした

素戔嗚尊、本には元々は出雲の地方神だったらしいが、

インドの祇園信仰と融合する事で全国で祭られるようになったらしいと書かれている

説明は省くが牛頭天王と同一と見られる事が多いそうだ

八坂神社、氷川神社に祭られる

御利益は災厄、疫病を除くと書いてあった。

櫛稲田姫の方は古事記では櫛名田比売、日本書記では奇稲田姫と書くらしい、素戔嗚尊の妻

有名な八岐大蛇退治のヒロイン

名が示す通り、稲、水田の神様

素戔嗚尊が祭られている神社には大抵一緒に祭られているらしい

他にも色々書いてあったがよく解らんし退屈だ

本を枕に寝てしまった

242 :本当にあった怖い名無し:2007/08/17(金) 00:31:25 ID:vM+LwB6eO

(む)

目を覚ますともう日が暮れかけていた

またか、と憂鬱になる

最近、夜になるのが怖いような気がするのはオレだけだろうか

とりあえず飯を食わせてもらいに階下に降りる

姉は相変わらず辛そうだったが皿を並べている、甥がそれを手伝っていた

オレも手を貸そうとしたところへポケットの中の携帯が鳴った

東京の友人からだ

オレは通話にして庭におりた

彼の話を要約すると、毒蛇気神尊の言葉にヒットするサイトは五件にも満たなかったそうだ

しかし、この同じ静岡県にあの神社とまったく同じ三柱を祭る神社があるそうだ

ただ、そちらの方は神主も常駐しており、由緒も正しいなかなかに大きな神社らしい

関係者に迷惑が掛かるのでこれ以上の事は書けない

どうも牛頭天王と婆梨妻妻女との間の子、八王子の内の誰か、あるいはその子孫の誰かのことを指すらしい

なんの神なのか、なんと読むのか、それ以上詳しい事は、その時は解らなかった。

礼を言って携帯を切った

家の方へ振り向くと窓が開けっ放しだったことに気が付いた。

うっかりしていた、蚊が入ってくる

オレは家の中に入り窓を閉めた。

245 :本当にあった怖い名無し:2007/08/17(金) 02:57:00 ID:vM+LwB6eO

(う)

その晩も甥は枕を抱いてオレの部屋にやって来た

だが昨晩よりも幾らか表情が和らいでいたので、オレも少しは緊張が解けた

同時に、姪も姉と共にやってきた

さすがに姉も気になるんだろう

もしもウツる病気ならば困るから、しばらくオレの部屋で寝かせて欲しいと。

それならば、姉が作った料理を毎日食べ、同じコップで水を飲んでいるオレ達にとっては、

科学的にはあまり説得力のない提案だとは思ったが、ここは姉の言葉に従った

今ならわかる、当時離婚したばかりのオレは、小さな、頼りない命に餓えていた、誰かを、全力で守りたかった

甥が姪の布団を抱えて上がってきた

甥にとってはキャンプな気分だったのかもしれない

この二人に限らず、親類の子供達にあう度に、

愚にもつかない怪談話をして、怖がらせては面白がっていたオレだった

だが、この時はそんな気分でもなかったし

また、そんな雰囲気でもなかった

で、オレはスサノオのオロチ退治の話をしてやることにした

今日買った本の内容を子供向きにして

今から思うと子供には充分コワいか

最初に甥が寝た

姪の方はまだ眼が冴え冴えと、じっと天井を見ていた

次に寝てしまったのはオレらしい

247 :本当にあった怖い名無し:2007/08/17(金) 03:19:32 ID:vM+LwB6eO

(ゑ)

夜中、顔にサワサワと顔に何かがあたる感じがして、くすぐったくて目を覚ました

こじ開けるようにして瞼を持ち上げた

目の前、顔のすぐ近くにあの人形の顔があった

頬に人形の髪の毛があたっていた

人形の肩の辺りに小さな指が見える

人形の顔の、そのまた背後に姪の顔が見える

姪が人形を捧げ持ちオレに向けて何かを喋ってた

人形にオレを紹介してるのか?

体が動かなかった

目玉だけが、ただギョロギョロと自由に動かせた

声も出なかった

悲鳴をあげるのは、生涯、後にも先にもこの時だけのために取っておいたのに

「『姪と人形』3/4」に続く

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