百物語 『昏睡状態の母』 - 洒落怖本舗

百物語 『昏睡状態の母』

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202 :名無し君:2000/08/20(日) 23:46

名無し君の母が死ぬ少し前。

そのころは母はすでに昏睡状態で、名無し君はずっと病室に泊まりこんでました。

ある晩、人の話し声で目が覚めました。

みると、自力で起きることもできない母がベッドから起きあがって、壁にむかって話をしていたのです。

「XXさん、これはこれは遠いところから、いらしてくれてありがとうございました・・・・

 XXさんも、きていただいてありがとうございます」

そんな挨拶を延々と白い壁にむかってやっているのです。

もしやだれかいるのかと、名無し君は眼をこらしましたが、

白い壁をいくらみても、読書灯に照らされた母の影が揺れているだけです。

(もし、このとき人影でもみえていたら、名無し君は卒倒していたでしょう・・・・無茶コワかッた)

とりあえず母の口からでる名前を、メモしておりました。

一時間近く母は挨拶を繰り返したあと、

「よろしくお願いします」と深々と頭をさげ、そのまま床に倒れこみそうになりました。

あわてて捕まえてベッドに寝かせますと、すっと寝入ってしまいました。

母が亡くなったのはその三日後です。

葬儀のとき、集まった親戚にメモっといた名前を聞いてみましたところ、母方の伯母が教えてくれました。

みな昔、母と仲のよかった人たちで、事故や病気で亡くなっておりました。

昏睡が続くと錯乱することもあると医者には聞かされておりましたが、

60にもならなかった母が、よりによって死んだ人の名前ばかり口にしていたのはなぜなのでしょう。

名無し君としては、母の仲良しさんたちが迎えにきてくれたのだと信じております。ハイ。

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