ほんのりと怖い話 『友人の願い』 - 洒落怖本舗

ほんのりと怖い話 『友人の願い』

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37 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/01/29 00:17

ある日、海外勤務していた友人から至急の電話があった。日曜の明け方、シンガポールからだったか。

寝ぼけ眼で受話器を取ると、

『社宅のトランクルームに私物を預けてあるんだが、それを取って来てもらえないだろうか』

挨拶もそこそこに友人は切り出した。

『管理人に話は通してあるから、悪いが今日中に取りに行ってくれないか』

切羽詰った様子は受話器の向こうからも感じ取れた。

『黒い蓋つきのビニールケースなんだ。それがすぐ必要なんだ』

友人のたっての頼み。こちらにも断る理由がなく、勢いで受けてしまった。

38 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/01/29 00:18

荷物の引き取りはスムーズにいったのだが、肝心なことを忘れていた。友人の電話番号を控えていなかったのだ。

確か年賀状があったはずだと家捜ししたが、途中でひどく面倒臭くなってしまった。

今日中に連絡あるだろうと思い、そのまま部屋で待機した。

夜更かしして朝早く起こされ、そのまま電車で郊外の団地まで行き、昼過ぎにはすっかり疲れていた。

そして、うたた寝してしまった。

夢うつつに赤ん坊の泣き声が聞こえていた。

ふっと目を開けると、視線の先にビニールケースが。

そう言えば中身は何か聞いていない。

もし国際郵便で送ることになれば、内容を知っていなけりゃなあ。そんなことをぼんやり考えていた。

このまま送って構わないのか?などと自分に言い聞かせながら、ケースを厳重に梱包してあるテープを剥がした。

39 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/01/29 00:19

中からは色々なベビー服が出てきた。

そして一番奥から、バスタオルに包まれた赤ん坊のマネキン人形が・・・。

マネキン人形は、柔らかい樹脂か何かでできたかなり精巧なものだった。

こんなもの売っているのか?と思いつつ人形の体に触れていると、背中に何か感触があった。

タオル地の服をめくると、一通の手紙が出てきた。

友人には悪いと思ったが、ここまで来て止めるわけにはいかなかった。

40 :あなたのうしろに名無しさんが・・・ :03/01/29 00:20

『この人形をあなたの赤ちゃんだと思って可愛がってください。

 あなたの愛情が人形に伝われば、あなたは再び身ごもるはずです。

 その時が来たら、この人形をすみやかに同じ境遇の女性に渡してください。

 手元に置いてはいけません。

 もし手放さなければ、あなたは一生この人形を愛しつづけることになります。』

手紙にはそう記されていた。

友人は結婚していた。子供はいなかった。

いろいろ思いを巡らしていると電話が鳴った。友人からだった。

『間違いがあったら困るんだ。Fedexで会社宛に郵送してくれ』

こちらも人形のことは黙っていたし、友人も口にしなかった。

数日して、友人から荷物が無事に届いたという知らせがあった。

その後、音信不通になったが、時々考えることがある。あの人形の行方について。

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