813 :本当にあった怖い名無し:2018/05/21(月) 16:22:33.47 ID:uwClyC9x0.net
大学受験で東京に出てきた折のことだから、すでに三十年前の話。
池袋のビジネスホテルの随分上層の部屋に宿泊。
その部屋は、転落事故あるいは自殺防止のためででもあろうか、窓は嵌めきりのガラス窓で開かないようになっていた。
しかし、どうしたことかその開かない窓の窓枠に、とってつけたように錠がついている。
例の耳タブのような形の金属片が180度回転するようになっている、あれ(何やらという名前がついているはずだが忘れてしまった)。
「変なの」とは思ったが、翌日に入試を控えていたため、あまり気にせず一晩をすごし、
快眠のうえで臨んだ翌日の試験もまずまず上出来に終わった。
東京観光のためにもう一泊したあと、
チェックアウトの際、宿泊中何度か言葉を交わしていた若いホテルマンに、錠のことをたずねてみた。
「ああ、あれ」
彼は、特にどうということもない様子で答えた。
「つけとかないとね、誰かが覗くんです。で、窓、開けようとするの。見えるところに、つけとかないと。
ま、開けようとしても、開かないから大丈夫なんですけど。やっぱ、気分悪いでしょ、そんなことされると」
誰かが覗き、開けようとする―。
地上、何十メートルだかの高層の窓を、外側から開けようとする、誰か?
上京して既に三十年が経つが、今でもあのあたりを通ると、ちょっと、薄ら寒い。
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