死ぬ程洒落にならない怖い話 『事故を呼ぶ車』 - 洒落怖本舗

死ぬ程洒落にならない怖い話 『事故を呼ぶ車』

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936 :<:2005/04/12(火) 10:59:15 ID:zEHTNm/30
今から二年ぐらい前、オレがお得意さんの四九日に出向いた時に聞いた話。

入社以来、仕事にかまけていた私は、青森出張後に漸く休暇を貰う事ができる事になった。

その為、これを機会に中古車を買う事に決め、チェーン展開している中古車屋に行き物色していると、

黒っぽい制服を着た店員がやってきて、色々と案内してくれた。

客が私しか居ないので暇なのだろう。

そう思った私は、時間をかけて交渉しても、安く中古車を購入する事に決めた。

店員はじっと私を見て、一台の車を案内してくれる。

其れは店の裏の工場のような場所においてあり、これから展示する予定だと言う。

まだ値段を公式につけていないから安くできる、と言うので早速契約する。

チェーン展開している店だから、その点は信用していた。

唯一、その店員が私をじっと見ているのが気に掛かったが、変な奴だとしか思わなかった。

まあ、どこにも変な奴はいるものだし、

事によったら私も、こいつから見れば変な奴なのかもしれなかったし・・・。

翌日、会社に乗っていくと同僚にうらやましがられたが、

「今どきナビも着いていないのか?」と言われて、急に欲しくなってきた。

前日、妻にその旨伝えたら、「ろくに遠出もしないくせに、無駄!」の一言で却下されていたが・・・。

そういう訳で、妻も”ついで”に青森まで連れて行くことで交渉は成立し、

会社に出入りしている業者に、ナビのカタログを持ってきてもらう事にした。

自分で店に行けばいいのだが、何しろ仕事が忙しい。

翌々日、会社に来たのは顔見知りの業者ではなく、見知らぬ男だった。

彼は、いつもの業者が急な用件で来れなくなった為に、代理として来たと述べた。

私は渡されたカタログを見て、周りの同僚等にも聞きながら買おうかと思っていたが、

その業者が言うには、型が古いので良ければ、セール中なので半額で購入できると言う。

又、「Aさんはお得意さんなので、更に割り引きます」と言うので、

まあ、信頼できる業者だし、妻にも嫌味を言われないだろうと言う事で、そのお勧めのナビを購入した。

937 :<:2005/04/12(火) 11:00:05 ID:zEHTNm/30
妻は私の運転技術に疑わしそうだったが、運転には自信はある。

実を言うと学生の頃は親の車に乗っていたのだが、ちょっとした事故を起こして以来、乗るのを止めたのだ。

事故といっても接触で、相手も軽傷と言う事で弁護士を立てて示談にした。

入社後はさすがに社用車には乗っているが、自分の車を初めて持てた事で浮かれていたのかもしれない。

高速を下りたあたりから、ナビに従って運転する。

初めて使うナビは、地図の上を矢印が動くと言う物で、少し見難いのが玉に瑕。

だが、方向音痴の妻にナビしてもらう事に比べれば、天と地の差があるだろう。

順調にナビに従って走っていると、いつの間にか霧が濃くなってくる。

道は少しずつガタガタと言い出し、荒れてくるように感じるが、

田舎なんてこんな物だろう(失礼)と思い、余り気にせずに運転を続ける。

妻は終始無言で、手元の地図を見ている。

方向音痴の癖に、ナビをやりたがるから一応持たせておいたが、

結局使う事がないので、拗ねているのだと思っていた。

霧が深くなる中でフォグランプをつけたまま、私は運転を続ける。

妻が心配そうに運転を控えるように言うが、私にはその言葉が遠くに聞こえる。

非常に遠くから誰かが何か言っている様に聞こえた。

唯一、ナビの声だけがクリアに聞こえてくる。

もっと、スピードを出しても大丈夫。

私は何故かその思いに囚われていたと思う。

「止めなさいよ!」

妻が顔面蒼白になりながら、強く私の頬を叩く。

目の前が一瞬暗くなり、その瞬間我に返った。

急ブレーキを踏み、荒い息をしながら暫く二人で見つめ合う。

一瞬の沈黙。

そして、しわがれた、そして暗い声が唐突に車の中に響き渡る。

『なんで・・・・言 う 事 を 聞 か な い ん だ よ』

938 :<:2005/04/12(火) 11:01:01 ID:zEHTNm/30
妻と私は硬直した。

一体何が起こったのか判らなかったのだ。

ナビはその声を最後に沈黙し、何の反応も示さなかった。

二人して暫く動けなかった。

漸く霧が晴れてくると、満月の下に広がるのは断崖と言ってもいいような急斜面だった。

私達は車をどうにかバックさせながら道を引き返し、漸く国道に戻る事ができた。

それから先は、二人とも終始無言だった。

声が聞こえたら、恐らくハンドル操作を誤りそうな位怯えていた。

地図を見ながらどうにか目的地に辿り着くが、空は既に白みかけていた。

翌日、出張先の人に頼んで、車を引き取りに来てもらうことにした。

私は怖くて乗りたくなかったし、ナビの外し方も判らないので、

「調子が悪いので見て欲しい。ついでに、ナビが壊れているようなので取り外してくれ」と依頼した。

そして、あの怪しいカーナビの業者にも電話する。

一体あのカーナビは何なのか?変な由来でもありそうだった。

しかし、カタログを持ってきた業者は、私の質問に明確に答える。

「旧式の売れ残りだから安くした」と・・。

なんら怪しいところはなかったのだ。

ならば・・全部私と妻の錯覚だったのだろうか?

しかし、あの山に道なんてないのは、地元の人間に確認しても、やはり明らかだった。

だが山を超えると、霊山として有名な場所に出ると言う。

939 :<:2005/04/12(火) 11:02:28 ID:SJ+kB9Y/0
ところで、あの車が私の元に戻る事は二度となかった。

翌日の昼に、修理業者から電話が掛かってくる。

車を引き取りに来た業者が、工場に帰ってきていないと言う。

あれから、十数時間経っている。

警察に連絡し、そして翌日、谷に転落している車が発見される。

警察では、ハンドル操作を誤って転落した、と言う見解を出したが、

事故現場は見通しの良い緩やかな山道で、とてもハンドル操作を誤るような事はないはずと、

警官も不思議そうだった。

そして一番気になったのは、死因は”心臓麻痺”と言う事だ。

私と妻は、再び黙り込んでしまった。

警察は簡単な聴取で帰してくれたが、気になって仕方がなかった。

そして、その話には続きがあった。

その車は事故車だった。

巧妙に偽装され素人目には判らないが、二年程前に事故を起こしているという。

そんなものを購入させるとは!!

私はその警察の証拠を持って、あの中古車販売店に怒鳴り込む。

だがその中古車販売店は、その様な車は取り扱っていないし、裏の工場は廃棄自動車用だというのだ。

又、そんな従業員はいないし、契約書自体もこの販売店の様式と異なっていた。

その上、契約する場所も決められており、私のように近くのプレハブのような所では決して行わないと言う。

なら・・・私は一体誰と契約したのか?

940 :<:2005/04/12(火) 11:04:02 ID:SJ+kB9Y/0
その時、私は硬直した。

あの店員の目を思い出したのだ。

だが、私は自分の考えを振り払う。

あいつは自殺したはずだ・・・と。

学生時代の接触事故によって、相手は軽傷であったが、ある大会への切符を失ったという。

あいつは恨みの篭った目で私を見てくれた。

だが、弁護士は良くやってくれ、示談という結果によって、私は罪を免れ警察の厄介になる事もなかった。

示談金は親が十分なほど払ったし、責任は取ったはずだ。

自殺との関連性などないはずだし、もしあったとしても逆恨みだ。

私は訳が判らなかった。

死んだ人間はこの世にいる訳がない。

なのに、そんな常識的なことが今は確信できなかった。

心配そうに見る妻には、事の真相を話しておこうと思う。

それと、余りにも勧められるので、御祓いに行く事も考えている。

以上が、お得意さんの日記に書かれていた内容だという。

オレは焼香後、そそくさとお得意さんの家を後にした。

あの型のナビを搭載した車が、その後も三件の死亡事故を引き起こしているという。

その関係で今日来た訳だが、聞かない方がよかったのかもしれない。

ナビか、車か、それとも”そういった場所”が原因なのか判らない。

私はナビが原因とは思わないのだが、以降、あの型のナビは縁起が悪いという事でうちでは取り扱っていない。

今も未練を持った奴が、この国の何処かで、曰つきの”何か”を広めているのだろうか?

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