死ぬ程洒落にならない怖い話 『千寿江』 - 洒落怖本舗

死ぬ程洒落にならない怖い話 『千寿江』

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653 :1/10:2013/11/24(日) 23:42:06.05 ID:zUKnxq1Si

もういろいろ済んだから、書かせてくれ。

かなり長い。

父親には妹がいたらしい。

俺にとっては叔母にあたるが、叔母は生まれて数ヶ月で突然死んだ。原因不明。

待望の娘が死んでしまい、婆さんは大層落ち込んでいた。

見兼ねた爺さんが婆さんにフランス人形を買い与えると、

婆さんはそのフランス人形に叔母と同じ名前の『千寿江』と名付けて可愛がった。

毎日撫で、傍に置き、綺麗にしてやり、共に寝たそうだ。

それが変わったのが、俺の妹が生まれてから。

女が生まれて、婆さんは酷く喜んでた。

両親共働きだったし、代わりに婆さんが妹を大層可愛がって育てた。俺も可愛がられたけどな。

それで、今まで大切にされていた千鶴江の定位置は、婆さんの枕元でなく、仏間になった。

誰もいない仏壇だけがある仏間だ。

俺はよく先祖へ挨拶しろと、夕飯前に御神酒を上げにそこへ行かされていたもんだ。

暗くてくそ寒い、不気味な部屋。

654 :2/10:2013/11/24(日) 23:43:28.58 ID:zUKnxq1Si

小学校高学年の時、いつも通り御神酒を上げに仏間に入り、仏壇に手を合わせた。

その時、誰かが後ろに立っているような気がしたんだ。

振り返ると何もない、いつも通り、ピンクのドレスの千寿江がいるだけだ。

それがその時は妙に怖かったのと、多感な時期だったのもあって、

思わず「なんだよ、文句あるのかよ。かかってこいよ」と、千寿江を挑発した。馬鹿だよな。

居間に戻って家族に「千寿江に睨まれた!」と報告すると、婆さんが激怒してな…。

後にも先にも婆さんがあんなに怒った事はない。

怒る婆さんに合わせるように父親も激怒、ゲンコツをくらった。俺涙目。

その時は謝ってそれで終わり。

655 :3/10:2013/11/24(日) 23:44:22.76 ID:zUKnxq1Si

問題が起きたのは数日後だった。

休みの日だったか、まだ明るい時で仏間もいやに明るかった。

昨晩、下げ忘れた御神酒を下げに仏間に入ると、千寿江が定位置にいない。

いつも置いてある棚から落ちて、畳へ。手首が外れていた。

正直、俺に何かするために這い出して動かしたのかと…。

びびって走って家族の居る居間に行くと婆さんがいて、

怒られるかもとは思ったが、本気で怖かったので婆さんに報告。

俺の尋常じゃない様子に婆さんも心配になったのか、一緒に居間にきてくれた。

そしたら千寿江は、今度はちゃんと定位置にいた。手首もついてる。

俺が嘘を吐いた感じになってしまったが、弁明している時に親父がきて、

「あ、悪い。それ俺が落とした。トイレ行ってから直したんだよ」って。犯人親父かよ!

勘違いして半泣きになってる俺を親父が爆笑して、婆さんも今度は俺を慰めて、事なきを得た。

656 :4/10:2013/11/24(日) 23:45:17.61 ID:zUKnxq1Si

でも、その晩、婆さんが寝たあと、親父が俺の部屋にきた。

「昼間のあの人形な。戻したのは俺だ。

 だけど、落としてはない。お前、本当に嘘は吐いていないか?」

親父の話によると、俺が大きな音を立てながら仏間を出てくるのを見て、

どうしたのかと仏間を覗いたら、千寿江が落ちてたのを発見。

見つかるとまずいから、そっと直したという話だった。

ただ、おかしかったのは、手首なんて取れてないと親父が言ったことだ。

どうやって落ちて、どうやって手首がくっついたのか。

俺は怖くて、御神酒上げる係をサボるようになった。

御神酒持って出て、客間で2、3分待って、それから居間へ戻る。

多分、半年くらい御神酒を上げてなかったんだけどな、

その頃、妹が死んだ。小学校に入って間も無くだ。

657 :5/10:2013/11/24(日) 23:46:04.51 ID:zUKnxq1Si

死因は原因不明の高熱。

突然ガーッて熱が上がって、入院して、それっきり。

俺はもしかしたら、俺が御神酒サボってるせいじゃないかって思って、

でも親にも婆さんにも言えなかった。罪悪感とか、そんなん。

妹が死んだのは俺のせいだって思った。

母親は、妹が死んだのは千寿江のせいだって言い始めた。

話を聞くと、妹は今際の際に「ちぃちゃーん」と泣いたらしい。

ちぃちゃんなんて友達は妹にいなかったし、思い当たる事があればあの怪しげな人形。

俺が過去騒いだせいかも知れないけど、母親も過敏になって、人形を捨てる!と言い出して、

妹の葬儀中に大喧嘩した。

この一件から、うちの両親は不仲になって、母親は実家へ帰った。

親父は黙々と仕事をして、婆さんは千寿江を抱きながら毎晩泣いた。

親父仕事から帰って来ないし、婆さんは泣いてばかりだし、この辺りから俺が家事をするようになった。

658 :6/10:2013/11/24(日) 23:46:56.03 ID:zUKnxq1Si

次に婆さんの呆けが始まった。今思えば当然だ。

飯を食うか、部屋に篭って人形抱きながらぼーっとして、泣いて、泣き疲れたら寝て。

ご飯だよって呼びに行ったら、何か食ってんの。

何食ってんの?って聞いたら、ご飯って言う。

はあ?と思いながら婆さんの顔見たら、金色の糸が口から出てんだよ。

そんで、手元には半分剥げた千寿江。

俺はこの時が一番怖かったと思う。

急いで婆さんから吐き出させた。

母親に相談しても、あんな人知らないの一点張り。

父親に話して、病院にって言っても、仕事が忙しいから連れていけない。お前が面倒みろ、と。

そればっかりだった。

その時、俺まだ厨房。

でもな、妹が死んでから、うちの家族、おかしくなっちゃったんだ。

御神酒やってなかった俺のせいだと思うと…やらざるをえなかった。

中学は不登校になってたよ。

659 :7/10:2013/11/24(日) 23:48:15.03 ID:zUKnxq1Si

千寿江は婆さんの手によってぼろぼろだった。

髪は引き抜かれ、服は脱がされ、切り刻まれ。

汚い話だが、排泄物を塗りたくられもした。

流石に可哀想だって思って取り上げても、翌日にはちゃんと婆さんが持ってる。

色んなとこに隠したんだ。トイレの棚、両親の寝室、あとは下駄箱とか。

夜中、「ちずえぇ、ちずえぇ」って徘徊して見つけるらしい。

そしてまた千寿江をボロボロにする。

見兼ねてな…仕方ないから、試しに俺の部屋に置いとく事にしたんだ。

夜中というか3時過ぎか。朝方、婆さんが千寿江を探す声で目が覚めた。

俺の部屋、二階だし、まあ登って来れはしないし、呆けてから上がってきたことないし…

と安心しながら、千寿江をしまったクローゼットを見ると扉が開いていた。確かに閉めたんだ。

だって目につくとこに置いてたら、気持ち悪いだろ。

夜中見なくて済むようにって、クローゼットにいれたんだ。ビニールまでかけて。

でも、そのビニールはそこらへんに落ちてんだ。

660 :8/10:2013/11/24(日) 23:49:02.53 ID:zUKnxq1Si

ヤバイって、でも千寿江が。もうパニックに陥った。

布団の中で滝汗。寝たフリするか、起きて確認するか。

兎に角怖かったんだ。

そしたら、キィと物音が聞こえた。ドアを開ける音。

位置関係的には、

ドア/ベッド(俺の視線→)/クローゼット

俺は怖くて、ドアの方を見る事ができなかった。

そしたら不意に、声が聞こえたんだ。

「千寿江、こんなとこにおったんけ」

婆さんが登ってきた⁉ と思って、そこで俺は跳ね起きた。

でもそこには何もなかった。千寿江も、婆さんも。

怖くて、そのまま寝ることにした。気のせいだったと思うようにして。

661 :9/10:2013/11/24(日) 23:50:33.27 ID:zUKnxq1Si

千寿江と婆さんは、婆さんの自室で死んでたよ。翌日の朝、俺が見つけた。

死因は窒息。婆さんの喉には千寿江の髪の毛と千切れた服、目玉が入ってて、

婆さんの口の中には、千寿江の頭部が入ってた。そりゃ、飲み込めねえよ…。

明るい部屋ん中、陽が沢山差し込む中、婆さんがそんな感じに死んでるわけよ。

幸せそうな顔じゃなくてさ、いかにも苦しみましたってさ、

目を血走らせて、失禁して、片手に千寿江の胴体を強く握って。

婆さんの葬式は簡易的なものだった。

火葬だった。千寿江も一緒に燃やした。

墓に収める時にさ、墓に歴代の先祖の名前あるじゃん。

そこには既に千寿江(本物の叔母)って書いてあって、変な感じがした。

662 :10/10:2013/11/24(日) 23:52:08.41 ID:zUKnxq1Si

ここから俺の中で怖い話なんだけど、

叔母さんの千寿江さんの死因って、実は原因不明じゃなかったんだ。

うちの婆さんが首を閉めて殺したらしい。理由は知らん。

そういや父方の親戚付き合いがないなって思ったら、婆さんは絶縁されたらしい。

これは葬式にきた親戚の話。

何で逮捕されなかったのか聞いたら誤魔化されたから、 もみ消したんだろうな。

婆さんが死んで、今年で四回忌だ。

俺は高校に行ってない、何もしてない。

婆さんが死んでから、ずっとやる気が出ない。

この文書も、実は2ヶ月前から書いてやっと完成する。

いっそこのまま死にたいとすら思うよ、疲れた。

今まで起きたこと、全部千寿江叔母さんの呪いなら、この俺の状態もそうなのかもな。

俺の一存を滅亡させるつもりなのかも知れないなって思うと、ちょっと笑えるよな。

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