百物語 『ケラケラさん』 - 洒落怖本舗

百物語 『ケラケラさん』

スポンサーリンク
スポンサーリンク

118 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:hqzLBEKk0

雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 様  『ケラケラさん』

知り合いの話。

彼女が小学生の頃、河川敷で仔犬を拾った。

残念ながら家で飼ってはくれなかったので、

橋の下に毛布を入れた段ボール箱を置き、そこでこっそり面倒を見ることにした。

放課後になると、給食の残り等を持参して世話をしていた。

仔犬の方も、彼女にとても懐いていたという。

そんなある日、いつものように河原で犬と遊んでいると、声が掛けられた。

「まああ、本当に可愛いワンちゃんだわぁ」

吃驚して顔を上げると、知らない小母さんがニコニコとしながらこちらを見ていた。

「ねぇ、この仔ってあなたの犬なの?」

そう話を続けながら側まで寄ってくる。

「そうしたいけど、そうじゃないんです。

 飼っちゃいけないってお母さんに言われたから……」

そう返答すると、小母さんはおかしなことを言い出した。

「そっかぁ、見ていない間、ワンちゃんのこと心配だもんね。

 よし、オバちゃんがその心配を無くしてあげよう!」

119 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:hqzLBEKk0

何を言っているんだろうと首を傾げていると、小母さんは仔犬を指差して、甲高い声で頭を前後に振りながら笑い始めた。

 ケラケラケラケラ……

楽しくて仕方がないという表情なのに、その目だけが全然笑っていない。

小母さんはそんな怖い顔をしながら、少しも途切れず笑い続ける。

薄気味悪くなって逃げ出そうかと、彼女が考えた矢先。

突然、足元の犬がぶっ倒れた。

ひどく痙攣をしたかと思うと、そのまま泡を吹いて動かなくなる。

慌てて手を伸ばしたが、仔犬は既に死んでいた。

「良かったねぇ!これで心配することなんか無くなっちゃったよ!」

小母さんはそう言うと、鼻歌を歌いながらどこかへ去って行った。

彼女はしばらくの間、そこで立ち竦んでいたそうだ。

後で友達に聞いた話では、件の小母さんはその地域ではかなりの有名人で、

「死神ババア」とか「ケラケラさん」などと呼ばれて恐れられていたらしい。

指差してケラケラと笑うことで、小さな動物をよく死なせていたという。

120 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) NY:AN:NY.AN ID:hqzLBEKk0

小母さんはその後、大きなペットショップの中でとある騒ぎを起こし、それきり姿が見えなくなった。

遠方の親類に引き取られたとも、病院へ入れられたとも噂されたが、真相はわからない。

知り合いはその時の光景がトラウマになったそうで、犬を飼うということが出来なくなった。

「飼いたいんだけどね。

 でもどんな犬でも、その死んだ姿が頭に浮かんできちゃって」

そう言う彼女は本当に寂しそうに見えた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました