死ぬ程洒落にならない怖い話 『ジェリーとトム』

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149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2000/08/06(日) 04:04

ジェリーが大人になった頃、トムはもうこの世にいませんでした。

トムは自分の命の終わりがすぐ傍まで来ているのを知ったとき、こっそりジェリーの前から姿を消しました。

ジェリーの前で、弱って涙もろくなった自分を見せたくなかったのです。

トムはジェリーの心の中では、ずっと喧嘩相手として生きつづけたかったのです。

トムがいなくなったのに気づいたとき、ジェリーは悲しみはしませんでしたが、退屈になるなと思いました。

トムとの喧嘩は最高にスリルのあるゲームでしたから。

胸の奥が不思議にチクチクはするのですが、それが何なのか、ジェリーにはよくはわかりませんでした。

トムの願い通り、ジェリーの心の中でトムは、いつまでも仲の悪い喧嘩相手でした。

そんなある日、ジェリーの前に一匹の猫が現れました。

トムよりのろまで体も小さい猫です。

喧嘩相手のトムがいなくなって寂しかったジェリーは、今度はこの猫を喧嘩相手にしようと考えました。

そこでジェリーは、穴のあいた三角チーズが仕掛けられたねずみ取りを利用して、その猫に罠をかけることにしました。

いつもトムにしていたように。

ジェリーは物陰に隠れて、ねずみを求めて猫が、ねずみ取りの近くに来るのを待っていました。

そして思惑通り、猫が罠に向かって近づいてきます。

ジェリーはしめしめと思いました。

いつものように自分がねずみ取りにひっかかるふりをして、逆に猫をねずみ取りにかけてやるんだ。

うふふ。手か尻尾を挟んだ猫の飛び上がる姿が頭に浮かび愉快です。

でも、その猫はトムではありません。

猫はチーズの近くまで来たとき、ジェリーが出てくるより早く美味しそうなねずみの匂いに気づき、

目にもとまらぬ速さで隠れていたジェリーに襲いかかってきました。

ジェリーはいつもトムから逃げていたように逃げましたが、

トムよりのろまなはずの猫にすぐに追いつかれてしまい、体をガブリと噛まれました。

ジェリーも噛みつき返しましたが、トムより体が小さいはずの猫は平気です。

血まみれのジェリーは薄れ行く意識の中で、本当は鼠が猫と喧嘩して勝てるわけがないことと、

いつもトムはジェリーに『してやられた』ふりをして、わざとジェリーを捕まえないでいたことを、そのとき始めて知ったのです。

トムの大きな優しさと友情に気づいたのです。

そしてトムがいなくなった時の、胸の奥のチクチクの正体にも気づきました。

かけがえのない友を無くした悲しみでした。

ジェリーの魂が体を抜けた時、空の上には、優しく微笑みジェリーを待っているトムがいました。

「また喧嘩ができるね」

「のぞむところさ、今度こそは捕まえてやるぞ」

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