366 :(1/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 15:38:12 ID:6yubSqQR0
流れぶった切って悪いけど、俺が子供の頃に体験した話だ。
あれは忘れもしない、小学五年の夏休み前のことだ。
古い学校でな、創立88年って位のボロボロの学校だったんだ。
一応改築やらなんやらで、生徒の手の届くような場所はコンクリートで塗り固められていたが、
天井付近や天井は木造だった。
今思うと変な感じだったよ。
んで、これまた年代物なプールがあるんだが、事件はそこで起こった。
いや、もう起こってたんだ。
379 :(2/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 16:47:03 ID:6yubSqQR0
今思えば、始めに起きてたのが、プールで泳いだりなんだりとしていると、足を捕まれる人が何人か出たんだ。
まあ怪談の類じゃよくある話だし、
俺がいたクラスでそういう被害にあったって言う奴も、お調子者な奴やちょっと意識過剰な奴とかだった。
先生も「フザけてるせいで、いたずらされるんだろう」と笑い飛ばしたりしていた。
はっきりとした形として現れたのが、俺のクラスがプール授業の日だった。
その年に入ったばかりの新米の女のA先生(20歳かそこらで美人だった)が、授業見学のような感じで来ていた。
授業は普通に行われて自由時間になったので、
担任やその見学に来てたA先生も、プールに入ってみんなと遊んでいた。
突然A先生が溺れた。
正確には、足がプール横にある溝に挟まって、浮かんでこれなくなったらしい。
俺は近くにいなかったのでその場は見合わせていないが、
担任や、近くにいた男子でなんとか足を溝からはずして、プールの上に引き上げたらしい。
380 :(3/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 16:54:36 ID:6yubSqQR0
A先生は、無理矢理足を引っ張ったので捻挫。(だったか?)
とにかく怪我をしたということで、保健室まで担任が連れて行った。
保護者がいないので、俺らもプールから上がって着替えるように言われた。
俺の学校は、女子更衣室はあったが男子更衣室がなかったので、男子は教室で着替えていた。
着替えをしてる最中、A先生を引き上げたうちの一人が、
「うちのプール、溝なんてあったか?」と言った。
俺も溝なんて初めて聞いたし、そんなものあるなんて知らなかった。
クラスの連中も同意見だったようで、誰も溝の存在は知らなかったらしい。
今考えると、人の足がハマるようなサイズの溝を、学校が放置しておくだろうか?
384 :(4/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 17:07:48 ID:6yubSqQR0
そんな話をしながら着替えを終え、女子たちも戻ってきた。
A先生にいつもベッタリとくっついていた女子2人組みは、半泣き状態になっていた。
女子も溝の件について、同じような話をしていたらしく、
男子と女子で、お互いの話を繋ぎ合わせてみようということになった。
A先生から離れて遊んでた俺や数人のクラスメートは、A先生の溺れる状態を遠巻きに見てるだけだったので、
自然聞く立場になる。
溝から引っ張り上げた男子数人は、声を揃えて「確かに溝はあった」。
足はプールの壁と壁の間に引っ掛かっていたし、
実際、先生のくるぶしと足の指先を掴んで引っ張りあげた奴も、同じ証言をしていた。
しかし女子の話によると、先生を助けた後にどんな溝かと確認したら、そんな溝は一切なかったという。
ただの平面で、プールの底面から壁に当たったら、そのまま真横の壁のみだったという。
プールの側面を全体調べたわけではないが、A先生のいた場所には溝はなかったそうだ。
386 :(5/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 17:18:36 ID:6yubSqQR0
そもそもプールの水深は、A先生が溺れるほど低くはない。
当時身長150cm満たない俺でも、肩は出るくらいの水深だ。
女性とはいえ、そんな俺よりも背が高かったはずのA先生が、
足がプール如きの溝に挟まったくらいで溺れるだろうか?
ああでもない、こうでもないと、男女で揉めてる所に、
A先生にベッタリだった女子2人(この子らもちょっと関係あるので、BさんとCさんとする)のうちのBさんが、
半ベソかきながら「・・・顔があった」と言った。
その言葉を聞いたCさんが、凄い怖い顔をしながら「Bちゃん!!!!」と叫んだ。
あの顔はたぶん一生忘れられない。怖かった・・・。
389 (6/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 17:33:21 ID:6yubSqQR0
顔とか言われて何が何だかわからないし、
ちょうど男女が揉めて騒いでる中だったせいもあって、誰も聞いてなかったようだが、
CさんのBさんを一喝する声のせいで全員が静まった。
「顔ってなに?」
誰かが聞いたけど、BさんもCさんも二人でボソボソと言い合いをするだけになって、返答はこなかった。
二人とも元々、微妙に人と接しないような性格をしてて、
二人だけの世界を共有してるような雰囲気がいつもあったので、
これ以上二人に触ってもしょうがない、っということになり、そのまま流すことにした。
390 (7/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 17:37:21 ID:6yubSqQR0
とりあえず、A先生を心配している女子と、好奇心強めな俺と男子数人で、保健室まで見舞いにいくことになった。
A先生は保健室にはいなかった・・・
保健の先生曰く、「足の怪我が酷くてここでは応急手当しかできないので、病院まで搬送してもらった」と言う。
子供ながらに俺たちは不信に思った。
A先生は2日後に学校に戻ってきた。
397 (8/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 18:39:09 ID:6yubSqQR0
ちょっと話を前に戻す。
A先生が戻ってくる前の話だ。
学校では、放課後になればプールが自由解放されていたが、
A先生が溺れた日は、学校側が「調査のためだ」とかいう理由で解放されなかった。
しかし、俺や溝から先生を助けたクラスメートで、本当に溝はあったのか?という好奇心を抑えきれず、
放課後にちょっと忍び込むことにした。
プールのフェンス自体はそんなに高いもんじゃないので、簡単に乗り越えられた。
中に入ると、プールの水は全て抜かれていた。
溝は・・・なかった。
398 (9/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 18:40:22 ID:6yubSqQR
話を、A先生が戻ってきた日に戻す。
A先生はおかしくなっていた。
はっきりとではないが、顔も違う感じになっていて、前の印象はなかった。
ソレは、日に日に状態が悪くなっていった。
色々変な行動があったが、一番印象に残ってるものは、
給食運搬用の台をリアカーのように押しながら、俺の教室の前で止まり、
BさんとCさんに目を向けて手招きしていた。無表情でだ。
担任の先生が苦い顔をしながら教室を出て行き、A先生をどこかに連れて行っていた。
400 :(10/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 18:41:10 ID:6yubSqQR0
六年生の水泳授業の時にA先生が、俺たちの授業の時のように見学にやってきたらしい。
前科もあるので、A先生は他の先生に、プールに入るのは堅く止められたらしい。
その日のA先生は、おとなしく座っていたらしかったが、
溺れてからおかしくなったA先生に、フザけてちょっかいをかけようと、
六年の男子生徒が「せんせー。溺れた場所ってあそこー?」とか聞きながらA先生に近寄ったら、
A先生の足には、とうもろこしを押し付けたような後がいっぱいついていたそうだ。
ちなみに、A先生はその場でニコニコしてるだけで、何も言わなかったらしい。
その話を、1年違いの兄弟がいるクラスの誰かが聞きつけて、うちのクラスでは瞬く間に噂になっていった。
足を小さな子供の霊に捕まれた跡だとか、溝が異次元と繋がっててそこに行った証だとか。
話が広まりまくって担任の耳にでも入ったのか、担任が「人の陰口を叩くな」と怒っていた。
401 :(11/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 18:43:37 ID:6yubSqQR0
数日経ったある日のこと。
俺と友達数人で「さぁ帰ろうか」と、授業道具をランドセルに押し込んで教室を出た。
廊下の奥の方で、誰かがうずくまっているように見えた。
出口に行くにはその廊下を突っ切っていくしかないので、そのまま廊下を進んでいった。
A先生だった。
A先生は、なぜか廊下に大量の教材を撒きながら、ペタリと座り込んでいた。
うずくまってるように見えたのはこのせいだと思う。
「あら、おはようございます」
A先生は放課後なのに、朝の挨拶を俺たちにしてきた。
A先生は気分がいいのかどうかわからないが、
「授業はどうだ」とか、「学校は楽しいか」とか、「いじめはないか」など色々聞いてきた。
わりと普通に話せる様子だったので、思い切ってA先生に、足のことを聞いてみることにした。
ただ、まさか足をいきなり見せてくれとも言えないので、(恥ずかしいし)
「靴のサイズいくつですか?」とか、子供なりに遠まわしに聞いていった。
402 :(12/27) ◆eQDK6O81/s:2005/09/30(金) 18:44:36 ID:6yubSqQR0
なんて言ったのかは覚えてないけど、友達が機転を利かせて、足を見せあうように仕向けた。
A先生は溝にハマった足の方を、ズボンをちょっとまくりあげて見せてくれた。
たくさんのデコボコの跡があった。
確かに、とうもろこしを押し付けた跡に見えなくもない。
でもあれは、口をイーッッ!!って引っ張って、そのまま足に押し付けたような歯型だった。
前歯や八重歯みたいな跡がクッキリついていて、大量の歯型を押し付けたような跡だった。
A先生がソレを見せて、俺たちが認識した瞬間を見計らったかのように、クスクスと静かに笑いだした。
「『憑き護』2/2」に続く
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