百物語 『ミルクと炒り子』 - 洒落怖本舗

百物語 『ミルクと炒り子』

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56 :KMT ◆nqnJikEPbM.8 :2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:1Ytbuggr0

【第十五話】 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 様  『ミルクと炒り子』

親戚の話。

彼女が勤めている幼稚園では、時々子供たちが妙なことを言い始めるらしい。

着席するように号令すると、「この子の椅子がありませーん」と皆が訴えてくる。

「えっ、どの子の椅子が無いの?」と聞き返すと、

「この子の椅子が無いでーす」と言って、子供らは揃って教室の一角を指し示す。

しかし、彼女を含め先生方には、そこに誰の姿も確認できないのだそうだ。

大人と子供が「見える」「見えない」で押し問答をしている内に、その見えない子は教室から出て行くのだという。

「あ、出て行っちゃった」と子供が口に出すと、それからやっと普通に授業が始まるのだとか。

最初は悪戯かとも思っていたのだが、これが頻繁に起こるようになると流石に先生方も気に掛かり、

近くのお寺さんに頼んで御祓いをすることにした。

御祓いが終わると、お寺さんは帰る前にこう述べた。

「子供とお爺さんが一人ずついましたよ。

 まぁ、これで静かになるでしょう。

 でももし次にこんなことが起こったら、そうですな、その時はミルクと炒り子(鰯煮干し)をお供えしてあげてください」

57 :KMT ◆nqnJikEPbM.8 :2013/08/23(金) NY:AN:NY.AN ID:1Ytbuggr0

お坊さんの言う通り、その日以降、見えない子は現れなくなった。

そして一年が過ぎた頃、また子供らが「この子の椅子がありませーん」と口にするようになったという。

お坊さんの言葉を思い出し、ミルクと炒り子をお供えしてみた。

すると、見えない子はぱったり現れなくなったそうだ。

「それからも、大体一年周期でこんなことを繰り返していますよ。

 でも、なんでミルクと炒り子なんでしょうかね。

 ミルクが子供の分で、炒り子はお爺さんの分なんですかね」

そう笑いながら彼女はこの話を教えてくれた。

『いやそれって本当は、子供やお爺さんとは違うのじゃないかな』

そんなことを私は考えたが、口に出しては言わなかった。

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