後味の悪い話 『ギターと老人』 - 洒落怖本舗

後味の悪い話 『ギターと老人』

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852 :本当にあった怖い名無し:2007/01/22(月) 21:39:05 ID:7XyWsSCk0

無職だった頃に公園を散歩していたら、

ギターを抱えてベンチに座っている老人を見かけた。

暇だから声をかけてみたところ、こんなことを話してくれた。

定年退職直後に事故で右足が利かなくなり、そのせいで奥さんと熟年離婚してしまった。

退職金もほとんどが慰謝料として持っていかれ、

わずかに残ったお金をはたいて、昔憧れていたギターを買った。

今はもう弾き方も忘れ、ただ抱えているしかできないが、

それでも今はこうしていることが幸せなのだという。

就職も決まって忙しくなったため、それからしばらく公園に行かなかったのだが、

ある時ふと思い出してその公園を訪れた。

しかしいつものベンチにその老人はいない。

通りかかった人に聞いたところ、

ある冬の日の朝、ベンチに腰掛けたまま、ギターを愛おしそうに抱えて死んでいたそうだ。

家族のために頑張ってきたはずなのに、孤独な最期を迎えた老人が悲しすぎると思ったと同時に、

もし無職のままだったら俺も将来そうなっちまうのかな、と思った。

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