百物語 『無菌室』 - 洒落怖本舗

百物語 『無菌室』

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292 :ベッドの下の男は俺 :2000/08/27(日) 13:55

私が病気で入院中に体験した事件をお話します。

当時、私が居たのは『無菌室』という部屋です。

6畳程の広さの個室で、トイレや簡易シャワーが壁に取り付けられた、

『綺麗な牢屋』といった印象の所です。(悪い例えですね。病院の方、ごめんなさい)

細菌の進入を防ぐ為、医師や看護婦であっても殆ど入室する事が無く、

面会者との会話もインターホンで行うと言う孤独な場所でした。

患者は1日中一人で過ごさねばならず、

出来る事と言えばテレビを観たり、本(ガス滅菌済み)や「逢魔が時物語」を読んだりするだけです。

部屋の東側の壁には大きな窓があり、夜になると美しい都会の夜景が楽しめます。

その反対側にあたる西側の壁は、透明ビニールのカーテンで仕切られ、その向こうは廊下になっています。

その晩、私はテレビを観ていました。

その時、私の視界にはテレビの脇にある窓も入っていました。

そして、その窓には反対側の廊下が映り込んでいました。

透明ビニール越しに見える廊下は、少し歪み、ぼやけて見えます。

と、その時、映り込んだ廊下を人影が通り過ぎて行ったのが見えたのです。

廊下は医者や看護婦がよく通るので、気にしなかったのですが、

実は私が居る部屋は廊下の一番奥の部屋で、その影が歩いて行った方向は行き止まりになっていているのです。

私は慌てて振り向きましたが、そこには誰も居ませんでした。

何かの見間違いだろうと思って気にしなったのですが、その後2回同じ事があったのです。

3回目の時は、さすがに私も「またか」と思い、ガラスに映った影をじっくり見たのですが、

人相こそ判らないものの、頭や体の輪郭がはっきり判り、見間違いとは思えなかったのです。

振り向きましたが、やはり誰も居ませんでした。

さすがに私も奇妙に思い、看護婦さんに聞いてみました。

すると看護婦さんが、「えっ、見えたんですか?凄い。実は…」と、次の様な話を語ってくれたのです。

この無菌室ができる前、ここは一般病棟だったそうです。

廊下は今と同じ位置にあったのですが、今と違い行き止まりは無く、先まで続いていたのだそうです。

そして、その頃、廊下を歩く影が何度も目撃されたそうなのです。

それもやはり直接見えるのでは無く、窓に映るかたちで……

この話にすっかり気を良くした私は、カメラを手元に置いて再度影が通るのを今か今かと待ち続けたのですが、

その後2度と影を見ることはありませんでした。

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