49 :本当にあった怖い名無し:2014/03/04(火) 00:11:21.30 ID:JB3auKcp0
最初は中学2年生のときだった。
長い坂の途中にある借家に、母と弟と俺の3人で住んでいた。
貧乏な母子家庭で、部屋数は少なく、夜寝るときにはひとつの部屋に布団を3つ並べて寝ていた。
当時から寝付きが悪かった俺は、部屋の電気が消されて家族が眠った後も、
懐中電灯で文庫本を読んだり、脳内で延々と物語を創作したり(ヒント:中2)、
眠りに落ちるのはいつも午前を回ってからだった。
ある日、寝付きが悪く困っているのだと友人に相談したところ、
「寝たふりしてるといい、そのうちホントに寝ちゃうよ」
とアドバイスをもらい、その晩さっそく試す事になった。
50 :本当にあった怖い名無し:2014/03/04(火) 00:12:25.47 ID:JB3auKcp0
布団の中で腹式呼吸、穏やかな気持ちで、体は極力動かさず、
頭の中を空っぽにする…それはちょっと難しかったのだが、
すうすうとニセの寝息までたて、ほぼ完璧な狸寝入りが出来ていたと思う。
いつもどおりの静かな夜だった。
1キロ先の都市高をゆく車の走行音が聞こえる。それに家族の寝息。
ふと、不思議なことに気付いた。
部屋の中には、布団が3つ並んでいる。
寝付きのいい弟、軽いいびき交じりで寝ている母、狸寝入りの俺。
弟が寝ているのは部屋の入口側で、俺は壁側。
なのに何故、壁側から寝息が聞こえるんだ…?
自分のニセ寝息を徐々に無音に近付けていく。
誰のものか分からない寝息がはっきりと聞こえている。
うーん、なんぞこれ…。
51 :本当にあった怖い名無し:2014/03/04(火) 00:14:00.33 ID:JB3auKcp0
相手がおそらく寝ている、という安心感からか、そんなに怖いとは感じなかった。ただただ不思議だった。
仰向けで寝ていた俺はじわりじわりと慎重に薄目をあけ、横目で壁のほうをチラ見してみた。
室内はぼんやり薄暗く、特に普段と変わったところはなかった。
誰も居ないはずの壁側に何かの姿が見えるような事もなかった。
まあ、見えていなかっただけかも知れないのだが。
おかしな現象を静かに観察しているうちに寝てしまった。
このことは家族にも友人にも話さなかった。
怖がらせないようにという周囲への配慮からではなく、
自分が「臆病者www」と馬鹿にされるのを避けるためだ。
52 :本当にあった怖い名無し:2014/03/04(火) 00:15:01.93 ID:JB3auKcp0
翌晩も同じことが起こった。
俺は狸寝入りを決め込みながら、やはり「?」の嵐だった。
俺を溺愛していたという死んだ爺ちゃんか?それとも妖怪のしわざ?
いろいろ考えた末に、
反対側で寝ている家族の寝息が壁で>字型に反射して自分の耳に届いているのではないか、
という科学的な可能性に行きついた。
なーんだ…と気が抜けて緊張もとけたせいか、そのまま眠りに落ちた。
そして3日目の夜。
寝息の数をひとつひとつ丹念に耳で拾って検証していき、人数と音の数がどうしても合わないことに気付いた。
害はないしなんか面白いし、もう別にいいよ、そういう現象でしょ…と放っておくことにした。
「んぐで…」
ふいに静寂を破ったのは弟の寝言だった。
ビクッとしてしまった。
母の「カー」という割に静かないびきも止まり、壁側から聞こえていた寝息も、その瞬間消えていた。
4日目、寝息は家族の分しか聞こえなかった。
ただ、その後も寝息がひとつ多いなと思う夜がたびたびあった。
寝息が聞こえた時間帯は0~4時で、日付も変則的。
53 :本当にあった怖い名無し:2014/03/04(火) 00:17:38.45 ID:JB3auKcp0
社会人になった俺は家を出て、ワンルームを借りて一人暮らしを始めた。
数か月が経過して、新しい暮らしに慣れてきたある晩、壁側からスウスウと寝息が聞こえてきた。
おおっ、この感じなんか久しぶりじゃね…!w
何故かやはり怖くはないのだ。
俺が「わーっ!誰だ!?」と声を荒げたら、きっと寝息は消えると思う。
それきりこの現象は起こらなくなってしまうのかも知れない。
俺が結婚して更に引越を重ねた後も、寝息はついてきた。
実は今でも、年に2~3回はおかしな夜がある。
新居で寝息が聞こえた翌朝、0感伴侶に寝息現象とこれまでのいきさつを話した。
「不思議な体験したことないから聞いてみたい、今度あったらつついてこっそり起こして!」
「騒いじゃ駄目だよ、絶対だぞ!」と言い含めたのだが、
つついて起こしてやると「んー、なん…?」と声を出して反応する。
そこでいつも寝息は止んでしまうので、夫婦そろって聞くのは無理そうだ。
次回はいつだろうね。
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