百物語 『担当患者さんの容態が急変した』 - 洒落怖本舗

百物語 『担当患者さんの容態が急変した』

スポンサーリンク
スポンサーリンク

192 :代理投稿 ◆n8k98SYXbk :2012/08/19(日) 02:11:46.27 ID:LAGoG+oz0

KMT ◆nqnJikEPbM.8 様

大学時代の同期にAという男がいます。

在学中は一緒に馬鹿をやった中ですが、今は専門を違えており、なかなか会う機会もありません。

そんな彼に久々に会ったときの事。

お互いに昼飯に行くところだったので、連れ立って昼を食べていると、Aが奇妙なことを言いだました。

「俺さ、全く怖い話とか信じてないけど、あれは怖かったなぁ……」

聞くと、Aが数日前の当直の日、受け持ちの担当患者さんの容態が急変したそうです。

その患者さんはかなりの高齢でしたが、容態は安定しており、本当に急なできごとだったといいます。

患者さんのご家族が駆けつけるまでの間、Aは心肺蘇生を試みておりました。

患者さんはなにぶん御高齢ですので、電気ショックは使えず、手技による心臓マッサージだったそうです。

やったことのある方は御存知かと思いますが、心配蘇生術はかなりの体力を使います。

Aは汗だくになりながら、必死にマッサージを繰り返していました。

しかし、結局患者さんの意識が戻ることはありませんでした。

患者さんのご家族に事情を説明し、開放されたのは深夜の2時を回った頃だったといいます。

「あと5分……あと5分続けていれば、心拍が戻ったんじゃないか…」

無駄だと頭では分かっていても、

ご家族の嘆きを見たり、実際に命が掌から滑り落ちる感覚を味わうと、そう思わざるを得ません。

Aは疲れた身体を引き摺り、当直室へ戻りました。

193 :代理投稿 ◆n8k98SYXbk :2012/08/19(日) 02:14:19.78 ID:LAGoG+oz0

疲れてはいるのですが、一向に眠気は訪れません。

しばらくぼうっとベッドに腰掛けていると、

トントン……トントン……トントン……トントン……

当直室のドアをノックする音が響きました。

「そりゃあ、不思議に思ったよ、なんだ、こんな時間に、って」

当直室にはナースセンターからの直通電話があり、普通はそこから連絡が来るものです。

こんな深夜に当直室を訪れる人間などいないはず……。

怪訝に思いながらもAは返事をしながらドアを開けたそうです。

消灯時間を過ぎた、薄暗い、病院の廊下。

そこには誰の姿も無く、どこかに隠れた様子もありませんでした。

「おかしいなぁと思ったけど、どうしようもない」

Aはドアを閉め、再びベッドに腰を降ろしました。

すると、

トントン……トントン……トントン……トントン……

と、またノックの音。

出ても、誰もいない。

さすがに気味が悪くなって、Aは三回目のノックは無視していたそうです。

194 :代理投稿 ◆n8k98SYXbk :2012/08/19(日) 02:15:39.64 ID:LAGoG+oz0

トントン……トントン……トントン……トントン……

いつまでも続くのではないかと思うほど、ノックは続きました。

「そのノックな?きっかり、5分続いた」

患者さんが恨み言を言いに来たのか、お別れを言いに来たのか、

それは分からないと言っていました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました